1. 鍼灸について
鍼灸の起源は、紀元前2000年ごろの古代中国にさかのぼります。
現在では、鍼灸の効果に関して、
世界保健機構(WHO)やアメリカ国立衛生研究所(NIH)などの
公的機関が研究を進め、科学的根拠を認める見解を発表しています。
これにより、さまざまな疾患や症状への有効性が
世界的にも認められるようになってきました。


2. 鍼灸が身体にもたらす作用
<自律神経のバランスを整える>
リラックス効果のあるセロトニンなどの
ホルモン分泌を促進し、
自律神経のバランスを整えることで、
ストレス性の症状を緩和し、心を落ち着かせていきます。
<内臓機能を整える>
自律神経は内臓の働きをコントロールしているため、
自律神経のバランスが整うことで、内臓機能の改善にもつながります。
<痛みを緩和する>
鍼の刺激により、脳内でモルヒネのような鎮痛物質が分泌されます。
また、痛みを脳に伝える神経経路をブロックする作用も働き、
痛みの緩和に効果があります。
<身体をゆるめる>
鍼やお灸の刺激により、血流やリンパの流れが促進され、
硬くなった筋肉の緊張が緩和されます。
<免疫機能を高める>
鍼灸刺激によって、ウイルスや病原菌を攻撃する
白血球やリンパ球の活動が活発になり、免疫力が向上します。
あわせて血流も改善され、疲労回復や修復の促進にもつながります。
<美肌をつくる>
皮下組織を刺激することで、
コラーゲンやエラスチンを生み出す線維芽細胞が活性化し、
肌の新陳代謝が促されます。
その結果、潤いと弾力のある肌へ導かれ、
シワやたるみの予防・改善、くすみの解消にもつながります。
3. WHOが認める鍼灸の適応症
運動器系: 関節炎、リウマチ、肩こり、腰痛、腱鞘炎、むちうち、捻挫など
神経系 : 頭痛、めまい、神経痛、自律神経失調症、不眠、ノイローゼなど
循環器系: 動悸、息切れ、高血圧症、低血圧症、動脈硬化症、心臓神経症など
呼吸器系: 気管支喘息、過呼吸症候群、気管支炎、風邪およびその予防など
消化器系: 便秘、下痢、胃炎、過敏性腸症候群、肝機能障害、痔など
代謝・内分泌系: 貧血、痛風、糖尿病、甲状腺機能異常など
生殖・泌尿器系: 膀胱炎、腎炎、性機能障害など
婦人科系: 生理痛、月経不順、更年期障害、冷え性、不妊、乳腺炎など
小児科系: 小児喘息、夜尿症、小児神経症(夜泣き、かんむし、偏食など)、アレルギー性湿疹など
耳鼻咽喉科系: 中耳炎、耳鳴り、メニエール病、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎など
眼科系: 眼精疲労、結膜炎、仮性近視、疲れ目、かすみ目、ものもらいなど


4. 「鍼」治療には種類がたくさん
紀元前の古代中国に始まった鍼治療は、
約四千年の時をかけて世界中に広まり、さまざまな形で発展してきました。
現在では、WHOやNIHなどの公的機関において検証され、
運動器系・神経系・内臓疾患・自律神経系など、
多くの分野で医学的な効果が認められ、
補完代替医療としての地位を確立しつつあります。
その広がりとともに、鍼の治療法も多様化していきました。
東洋医学に基づく伝統的なアプローチから、
現代医学に根ざした治療法まで、実に多種多様です。
それぞれが独自の理論体系を持ち、
まさに治療法の数は無限に近いと言えるでしょう。
「鍼治療の方法は施術者の数だけある」
と言われるのも、そのためです。
私は、鍼治療を「山登り」に例えることがあります。
山の頂上を目指すルートがひとつではないように、
身体を整えるという同じゴールに向かう方法もさまざまです。
岩場のコース、なだらかな道、ショートカット…
どのルートを選ぶかは、体質や症状、好みによって変わってきます。
たとえば、鍼を深く刺す方法(皮膚・皮下組織・筋膜など)もあれば、
皮膚表面に触れるだけの浅い方法もあります。
刺してすぐ抜く「単刺法」、しばらく留める「置鍼」、
電気刺激を加える「電気鍼」など、施術法もさまざまです。
鍼の太さ(約0.10〜0.30mm)や長さ(約15〜80mm)も
用途により使い分けられます。
「鍼治療」と一口に言っても、本当に幅広い選択肢があります。
どれか一つが正解ということではなく、
それぞれが「身体を整える」という共通の目的を持つ、ひとつの方法なのです。
だからこそ、施術を受ける方は、いろいろな治療法を試してみて、
自分にしっくりくる方法を選ぶことが大切だと私は思っています。