ケースレポート:回復力を取り戻したその先に見えたもの

ケース・レポート

こんにちは、tete la(テテラ)です。

今回は、実際の施術経験をもとにしたケースレポートをご紹介します。

個人が特定されないよう、一部内容を変更しておりますが、
臨床上の経過や考察については本質を損なわない範囲で記載しています。

東洋医学では、症状そのものだけでなく、
その背景にある体質や生活パターン、
心身のバランスも含めて捉えます。

今回の症例は、
回復力の低下を訴えて来院された方の経過を通して、
「回復すること」と「自分をいたわること」の関係について考えさせられたケースでした。

同じようなお悩みを持つ方や、東洋医学の考え方に興味のある方の参考になれば幸いです。

────────

▪️Mさん(60代女性)

主訴は、数週間続く胃腸の不快感と強い疲労感でした。
全身に力が入りにくく、筋肉痛も感じていましたが、
筋肉痛は軽度で日常生活に大きな支障はありませんでした。
患者自身は、筋肉痛よりも疲労感や回復力の低下を大きな問題として捉えていました。

婦人科系症状に対する薬と睡眠薬を服用中。
喫煙習慣はなく、飲酒は適量とのことでした。

外見上は活力があるように見えましたが、
本人は「考えすぎてしまうため、夜なかなか眠れない」と話していました。
睡眠薬によって入眠はできるものの、
十分に休息できた感覚がなく、疲労が抜けない状態が続いていました。

また、
自身のセルフケアは後回しになりやすい一方で、
家族や周囲の世話を優先する傾向がみられました。

体質的に胃腸が弱く、食欲はあるものの、
消化不良や腹部膨満感を起こしやすいとのことでした。

舌質は淡紅でやや乾燥し、浅い横裂紋が散見され、
舌尖はやや尖紅を呈していました。

これらの所見から、
疲労感、消化機能の低下、睡眠障害、
そして自己より他者を優先しやすい生活パターンを背景とした
任脈の失調を主病機と考え、任脈を中心とした治療を選択しました。

陰虚による疲労だけでなく、消化機能の低下、睡眠障害、
そしてセルフケアを受け入れにくい傾向は、
任脈を通じて包括的にアプローチできると考えました。

列欠と照海の組み合わせは、
陰陽の極性を調整しながら深いレベルで身体のバランスを整える作用があります。

さらに腹部の経穴を加え、
内側からの強化を図ることで消化機能を促進し、
患者が感じている回復力の低下を支えることを目的としました。

また、
脾胃を補い気血の生成を促すために胃経の経穴を使用しました。
胃経は顔面部で任脈と交会し、任脈との強い共鳴関係を持っています。
さらに任脈は「水穀の海」と深く関わるため、
消化機能への働きかけとしても重要であると考えました。

最後に神庭を加えました。
この経穴は精神を安定させ、
意識を支え、睡眠を助ける目的に加え、
胃経との交会を通じて任脈と消化機能との関係をさらに強化する意図がありました。

治療の主な目的は、患者の陰を養うことでした。
十分な滋養を感じられる状態へ導き、
消化機能を高めることで後天の陰を生成し、
その陰によって筋肉を養い、痛みを軽減することを目指しました。

また、患者自身が陰の持つゆったりとしたペースを感じ、
受け入れられるようになることも大切なテーマでした。

数回の任脈治療後、
患者は「以前のような元気が戻ってきた気がする」と話すようになり、
活動性も高まりました。幸福感が増し、本来の活発な性格が再び表れてきました。

しかし、その一方で舌の状態には大きな変化がみられませんでした。

その後、活動量が増えたことで古傷が再燃し、
背中、首、脚の痛みや違和感、さらに頭痛も現れるようになりました。

この段階では陽蹻脈を選択しました。

筋骨格系の痛みや、気血の停滞による不調に対応することに加え、
患者が活動や他者への関与に偏り、
十分な休息を取れていない状態に対処する必要があると考えたためです。

患者は、自身の外側の社会へ向かって過度にエネルギーを拡張し、
自身の内側の回復に必要な余白を十分に確保できていない状態にあるように見えました。

また、任脈治療によって自己認識が高まった結果として、
これまで意識されていなかった古傷や身体の不調が浮かび上がってきたとも考えられました。
それらの不調に気づき、患者本人が本人の問題として意識するようになったこと自体が
回復のプロセスにおける重要な一歩であったと思います。

そこで、
陽蹻脈の経穴を用い、身体の循環が回復するための基盤を作ることを目指しました。

なお、頭痛が強い場合には症状を悪化させる可能性を考慮し、
患側の経穴使用を避けることがあります。
その際は首や肩周辺の経穴を選択することもあります。

次回来院時には、患者の状態はかなり改善していました。
痛みはほぼ消失し、首から上背部に軽いこわばりが残る程度でした。

しかし同時に、再び「世話をする人」の役割へ戻りつつある様子も見られました。

患者は、長女や孫が遊びに来る際に無理をしてしまい、
再び痛みが出るのではないかと心配していました。
また、消化機能も再び低下傾向を示し、軽い消化不良を感じていました。
舌尖の赤みも残存していました。

任脈や陽蹻脈の治療は、一度で完結するものではなく、
時間をかけて展開していくプロセスです。
しばしば三歩前進して一歩後退するような経過をたどります。

私は、この症例の根本には任脈が担う資源不足が存在すると考えています。
そのため再び任脈へ戻り、身体の基盤を整えることが必要だと判断しました。

一方で、筋骨格系の問題にも継続的に対応する必要があります。
特に他者の世話を優先することで生じる身体的過労は、
症状再発の大きな要因となるからです。

そこで陰陽のバランスを調整し、
自律神経系の調和を促すアプローチを採用しました。

これは任脈と督脈の循環を活性化し、身体全体の統合を促す方法でもあります。

治療の目的は、患者が他者を支えるために自分自身を犠牲にしないことです。

任脈の失調が根本的な問題であると考えていますが、
任脈のバランスが回復するにつれて、
患者自身も長年続けてきた「外へ向かいすぎる生き方」と向き合っていく必要があるでしょう。

この症例では心理的側面に焦点を当てて述べてきましたが、
それは身体症状を軽視しているという意味ではありません。

任脈は、患者のセルフケア能力や自己受容を支えると同時に、
初診時にみられた多くの身体症状にも対応していました。

主な病態は気虚、陰虚、気滞として捉えることができ、
それらはいずれも任脈を通じて効果的に治療することが可能でした。

しかし、身体に現れる症状は単なる生理学的異常ではなく、
より深い精神的・感情的な不均衡を映し出していることがあります。

この症例は、回復力を取り戻す過程とともに、
自分自身を養い大切にすることを学んでいく過程でもあったと考えています。

────────

この症状から見えたことを、
一般向けの記事でも書いています。
よろしければ、そちらもご覧ください。

■ 鍼+アロマセラピー tete la JAPAN ■
人には、本来、自らを整える力が備わっています。

tete laでは、その力を穏やかに引き出すために、
鍼灸・アロマ・カウンセリングを組み合わせ、
心とからだの状態を丁寧に見つめながらサポートしています。

日々の中で、自分らしいリズムを取り戻す時間を。

青山一丁目(南青山エリア)を拠点に施術を行っています。
広島県福山市では
月に一度、数日間の施術日を設けています。

関連記事